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備忘録:映画「パラサイト」を見て思ったこと

 先日、映画「パラサイト」を見た。第72回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞して、第92回アカデミー 賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞した。非英語の作品が受賞するのは史上初の事でまさに快挙といった結果だ。

 格差社会や貧困のことを描いているが、「ジョーカー」の様にぐったりと疲れるタイプのものとは違い、笑える箇所も多かった。映像は韓国映画の得意なジメジメした感じが終始続くのだが。

 僕は観終わると、ネットでこの映画に関する感想を調べた。すると、韓国映画と日本映画を比較して日本のエンタメのこれからを憂う声が多く見つかった。確かに韓国は国が映画産業に資金を出し、今回アカデミー賞で作品賞を受賞する成果を上げている。迷走しているクールジャパンと比べれば、嘆くのも理解出来る。

 かといって、今の日本のエンタメはお金があれば、挽回出来るのかと思うと何か違う気がする。

 NetflixでイギリスのBBCが製作した「Giri/Haji」というドラマを見たのだが、このドラマは日本のヤクザ(窪塚洋介)が主人公で、エンコを詰める場面がモロに映っていれば、イギリス王室を揶揄するギャグなどもある。だが、仮に充分な予算があったとして、そういったドラマをNHKが作るだろうか?僕は作らないと思う。それは予算云々じゃなくて、批判が『起こりそう』だからだ。

 不祥事を起こしたタレントや俳優が、次の日にはその存在がなかったかの様に消えるのも同じ、批判が『起こりそう』だからだろう。

 そういった必要のない自主規制がなくならない限り、韓国映画との差は埋まらないと思う。もちろん、日本映画にも良いものはある。だが、メインストリームは未だテレビにあるのも事実だ。

 そして、もう一つ。結局は見ている側にも問題があるのだ。テレビは批判されることを意図的に避けているが、何が見られているか何を作れば世間の注目を集めるかはちゃんと分かっている。だから、人の「不倫」や「失敗」を追いかけるのだろう。それ自体にテレビに責任はないし、今の時代、多くの人が無条件に他者を叩きたくてウズウズしている。だから、毎日毎日ジョージ・オーウェルが「1984年」で書いた『二分間憎悪』を地で行くワイドショーが連日何時間も狂った様に放送されている。

 だから、結論を言うと我々ははっきりと意思表示するしかないのだ。今は配信サービスは充実しているし、Youtubeも適当に見ているだけで時間が潰れる。そうして、テレビに自分たちがどういうものを求めているか伝えるしかないだろう。時間はかかるだろうが、エンタメが変わるにはまずはそこからだと思う。